何がどうなっているのか。

んなもん、私には聞かないでくれ。
















Childhood #1





















気付いたら自分は豪華なベッドの中にいた。
そして、やけに体が小さかった。



「?」

そろりとベッドを抜け出し、姿見の前に行ってびっくり。
どう見ても自分は幼稚園児。

正直、悪い夢かと思って頬をつねってみたが、夢ではなかった。
普通だったら叫ぶところなのだろうが、今の私は開いた口が塞がらない。という状況。

「何なのよ・・・」

そう、昨日は同僚と仕事帰りに飲みにいって、そのまま家に帰り着いたはずだ。
それが、今はこんな純真無垢な幼女になってしまっている。


「・・どーしろって言うのかしら・・・」


呟く言葉も舌っ足らずで、苛立を覚えた。


「お嬢様、学校のお時間で御座います。」










お嬢様?








私は不思議に思ってドアをあけるとメイドらしき女性が立ってた。
女性はさっさと私を着替えさせると、朝食の準備が出来ているという、ダイニングへと連れて行った。
そこで、どうやら私は一人で食事をするらしく、さっさと食事を済ませると、さっきのメイドが私を連れて、歯を磨かせ、顔を洗わせ、とにかくいろいろやってくれて、いつのまにか、私は送迎の車の中にいた。


「今日から新学期ですね。お嬢様。」


「え、ええ・・」

とりあえず曖昧に返事をして、私は口を閉ざした。
この歳くらいの時はどのようなしゃべり方が正しいのかがさっぱり分からなかった。


「旦那様も奥様も、明日には戻られるそうですね。」

「うん」

とりあえず、この年頃の言葉遣いはこんな感じだろうか、と「うん」と返事すると、運転手は、優しい笑顔で私を見た。

運転、大丈夫?と思ったが、赤信号なので特に何も言わず、ただ、運転手の言うことを聞いた。

「また、そのような言葉遣いでは、叱られてしまいますよ」

どうやら、子供っぽく喋る必要は無かったらしい。

「そうね。」


では、遠慮はいらないな。と普段通りの仕草や感じで返事をすると、運転手は満足したように、前に向き直った。

どうにも意味が分からない。

私ははっきりとしない状況に頭を抱えながら幼稚園とやらに行った。
くだらない。本当に下らなくて、私はそっとため息をついて、寝ることにした。












「どうでしたか、幼稚園は。」

帰りの車の中、運転手が尋ねてきた。
どうやら彼は竹井さんと言うらしい。


「退屈だったわ。」


竹井さんはそれに笑って答える。
特に不快な感じはしなかった。


「では、今度から何か本でも持っていかれたらどうでしょうか。暇つぶしにはなると思いますよ。」


なるほど。それは良いアイデアだ。


「そうするわ。」


私はおそらく有るであろう、我が家の図書館を今日探ってみようと思った。


「そういえばお父様とお母様が帰ってくると聞いたのだけれど、いつ到着するのか分かる?」


私は、とにかく両親とやらに会う時間が気になっていた。
どう考えても両親ならば、私が今までいた幼稚園児の『私』ではないことに気づくだろうと思ったのだ。


「そうですね・・・7時頃と伺っておりますが。


時計は3時過ぎを示していた。
4時間ほどあれば、何か対策が立てれるだろうと、私はこっそり安堵のため息をついた。
このような家庭だったら、何かしらホームビデオか何かがあるだろうと思って、ともかくこの家の見取り図を頂こうと、竹井さんに聞いた。


「うちの見取り図ってあるかしら」

「それでしたら良子さんが管理していると思いますよ。」

「そう。」


良子とは誰だろうか。

と聞くこともできず、私はようやく着いた自宅を目の前に、車を降りた。



真っ直ぐに自室に向かった。



「夕食は如何なさいますか?」

「今日は部屋に持ってきてもらえるかしら」


無理か?と思いつつ頼んでみたら、案外すんなりOKされた。


「では、6時に持ってまいります。」


そうしてメイドと別れ、部屋のドアを開けて中に入った。


「お、帰って来たか。」


すると、見知らぬ男が部屋に我が物顔で居座っていたのだから、驚いた。









「・・・・・・・誰・・・?」




私は思いきり顔をしかめて聞いた。
黒髪に赤い瞳。年は20代前半といったところ。
赤い瞳だなんて、趣味の悪いカラーコンタクトだ。だなんて思いながら男を見た。


「俺はルシアンだ。ルアンでいい。」

「で?」

「お前、自分がどうしてここに居るのか、分かるか?」


私は少し考えて答えた。


「さっぱり。」

「だろうな」


ルアンという男はくつくつと低く笑いながら言った。


「俺は悪魔だ。」


頭は大丈夫なのだろうか?
本気で私は心配になって、ルアンをまじまじと見た。


すると、いきなりルアンの背から黒い翼が生えてきたものだから、目を見張った。


「信じたか?というか、信じるしか無いんじゃないか?この状況は。」


私は確かに、と頷いて、今日の出来事を振り返った。


「起きたら何故か幼稚園児。悪い夢かと思ったわ。」

「残念ながら夢じゃない。お前・・は一度死んだんだ。俺はたまたまその魂を拾ってこの世界にあったその器に入れた。」

「この体の中身は?」

「何と言うか、その器の持ち主は、死んだ。だから出してを入れた。詳しく話すとややこしいから、そう思っておけ。」


よく意味は分からないが、ともかく、持ち主が死んだこの体に私を入れたということなのだろう。


「で、私はどうすればいいの?」

「どうもしなくていい。普通に此処で生活すれば良いだけだ。」

「・・・随分私に都合が良すぎるんじゃない?死んだはずなのに、新しい人生を送れる。何で?」

「疑り深いな。ただ、俺が気に入った。だから助けた。それだけだ。」

「何で気に入ったの?私、貴方を知らないのに」


意味が分からなかった。
今まで普通に学校行って、そこそこの大学にも行って、ちゃんとした企業に就職して、なかなかのエリートコースを歩んできた。
しかし、それだけだ。
何も特別なものなんて持っていなかった。
それなのに何で私がこんなチャンスを手にしているのかがさっぱり分からなかった。


は俺を知らなくても、俺は知ってる。その事実だけで十分だ。」

「・・・・・・・納得できないわ。」

「・・・・・・・分かった。では、お前はここで第二の人生を歩む。その代わり俺の面倒を見る。これでどうだ?」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・」


私は真剣に私を見るルアンの目を見つめ、その真意を測ろうとしたけれど・・・


「・・・・・・分かったわ。これじゃどっちが面倒見るんだか分からないけど、そういうことにしておく。」


諦めてそう言うと、ルアンは満足そうに微笑んだ。
あまりにも美しいその微笑に私は呆然と見入る。


「ということで、俺もこの家で暮らす。戸籍上は従兄弟だ。一応俺も年相応の姿にはなるが・・・・」


突然何を言い出すのか。
ルアンはいつのまにか小学生くらいの姿になっていた。


「こんなもんか?」

「・・・・・・・何でもアリね。」

「俺は悪魔だからな。」


至極楽しそうにルアンは言うが、こっちは全然楽しくない。


「ということで、これから宜しくな、。」

「・・・・・ええ、ルアン」


取りあえず応えて笑っておいた。


「そういえば、これからこっちでのお前の両親が帰ってくるな。何、お前とその両親とはかれこれ半年ほど会っていない。だからお前の中身が変わったことにも気づくことはない。」

「あ、そう。」


私はほっと胸を撫で下ろした。































夜10時。

無事、両親との再会も終わり、私とルアンは私の部屋にいた。
どうやら両親はまた明日には海外に出るらしくて、3ヶ月ほど会えないと言われた。

どんな冷たい親なのだろう、と思っていたが、存外に両親は優しく、そして『私』のことを考えているようだった。


「絶対手紙書くから、ちゃんも書いてね。」

「おい、テレビ電話で通信した方が良いに決まっているだろう。」

「手紙がいいのよ。勿論、テレビ電話もだけどね。寂しくなったらすぐに電話するのよ?・・・ああ、でも今日からルアン君が一緒にいてくれるから平気かしら?」


おいおい、親公認でこの家に居座る気かよ、あの悪魔は。


私は密かに悪態をついて、父親に呼ばれると共に部屋に入ってきたルアンを見た。


を宜しく頼むよ。」

「はい、叔父さん。」


ルアンは自信たっぷりに笑って言った。







そこで回想をやめて、隣で本を読んでいるルアンを見た。

7,8歳の子供が読むには有り得ない程難解な化学書。
それは滑稽な姿に見えたが、自分もそう見えるのだろうと、これからのことを思うと、本のカバーを相応の本のカバーに換えて読もうと思った。


「そろそろ寝るか」


ぱたん、と本を閉じてルアンは言った。
私はぼーっと考え事をしていて、返事をしない。


、寝るぞ。」


ルアンはそう言うと、電気を消してしまった。


離れた位置にいるルアン。

私は目が冴えてしまっていて、眠れそうも無かった。
今日は色々なことが在り過ぎたんだと、明日から新しい世界が始まるのだと、言い聞かせて寝ようと瞳を閉じてみても、かえって目が冴える。


ぱちりと瞳を開けると、真っ暗な中に、窓から差し込む月の光が見えた。


「・・・・寝れないのか?」

「ま、ね。」


ため息混じりに言うと、ルアンが私を抱き寄せ、抱き締めた。


何事か、と硬直していると、ルアンがやさしく背を叩いた。



「別に心配する必要は無い。別にはこの世界で一人な訳じゃない。俺が居るし、これから色々な出会いもある。」



私は、自分の涙が頬を伝うのを感じた。


「・・・戻れないのよ?今までの、日々に。・・・・私は・・・」


今まで動じなかった。
否、動じてない振りをしていたのに、急に不安の波が押し寄せた。


「・・・・大丈夫だ。」


何を根拠に、と疑ってしまうが、何故か安心出来て、私は瞳を閉じた。




































とうとう始めてしまったテニプリ夢。
跡部夢なのに、オリキャラ出張ってます。
でも、最終的には跡部夢です。安心してください(笑)
というか、次はは中学生になってます。