獣と私#2
「こりゃ過労じゃなぁ〜」
眼鏡をかけた老人は立派にたくわえた髭を触りながら言った。
視線の先にはぐったりと横たわるフウがいる。
「まぁ、隣の部屋で暫く休ませておくと良い。あと、起きたらこれを飲ませなさい。」
老人、もとい医者はそう言ってムゲンに緑色の液体を渡した。
「分かった。ありがとな爺さん。」
ムゲンはフウを担ぎ、隣の部屋へ行こうと診察室のドアを開けた。
「まぁ、あまり無理はさせんことじゃな。」
「分かってら。あ、金はいいのか?」
ふむ・・・と老人はムゲンとフウを見た。
「お主ら旅のもんじゃろ?そうじゃなぁ・・・・じゃぁ3日此処で手伝いをしてくれんかの」
老人の言葉にはフウを休ませることも含んでいて、ムゲンは「分かった」頷いた。
「そういや爺さんの名前を聞いてなかったな。」
「わしはリョウタクじゃ。前田良沢」
「俺はムゲン、こっちがフウだ。んじゃ、隣の部屋借りるぜ。」
ムゲンはそう言って隣の部屋へ入っていった。
ムゲンはゆっくりとフウを布団に下ろした。
まだフウは目を覚ます様子は無く、ムゲンはその横に座り込んだ。
暫くすると、良沢が氷水の入った桶と布を持ってきた。
畳の上に桶を下ろし、フウの額に自分の手をあてて、熱を測った。
「ふむ・・・まだ下がらんのぅ・・・・」
ムゲンは氷水に布を浸して絞ると、フウの額に乗せてやった。
「ほ、優しいの、お前さん」
「うるせぇジジイ」
良沢は愉快そうに笑うと、立ち上がった。
「あと数時間もすれば目を覚ますじゃろう。そしたら、ソレ、飲ませてやってといてくれ。」
ムゲンが黙って頷くのを見届けると、良沢は部屋を出た。
良沢の言葉どおり、2時間もすると、フウは目を覚ました。
「あれ?ここどこ?」
「診療所だ、しんりょーじょ。」
ムゲンはそう答えて緑色の液体をフウに差し出した。
「飲んどけ」
フウは大人しくそれを口にした。
「苦ッ!!」
悪態をつくがしっかり全部飲み干した。
「しっかし、お前重い。ここまで運んでくるまでに押し潰されそ・・・ぶっ」
言い終わる前にフウは緑の液体の入っていた器をムゲンに投げた。
顔にクリーンヒット!!
ムゲンは顔を抑えて唸った。
「てめぇッ人が此処まで運んでやったってーのになんてことすんだ!!!」
「うるさいわね、レディーに対して失礼な発言するからでしょー!」
「誰がレディーだ。誰が!んなもん、もちっと胸つけてから言えっつーの」
「ふぉっふぉっふぉ、もう大丈夫そうじゃな」
二人はその声に動きを止めた。
フウはともかく、ムゲンは声をかけるまで気配に気づかなかったのに、訝しげに眉を寄せる。
何モンだこの爺さん・・・
「ねぇ、このおじいさんだれ?」
こそこそとフウが聞いてきて、ムゲンが答えようとしたが、良沢によってそれは遮られた。
「わしは前田良沢じゃ」
続
かの有名な前野良沢を文字って使わせていただきました。
すんません(汗)
また微妙な連載になりそうで怖い・・・
2006.5.28