冷たい風が吹き、ぴんと張り詰めた空気の中、月が光り輝く。
やっと二人でいられる時間を手に入れることができたドラコは上機嫌でハーマイオニーのいる部屋へと向かったものの、ドラコの目に入ったのは何冊もの本を横に積み上げて本に没頭する彼女の姿だった。
「あら、遅かったのね」
入ってきたドラコに目も向けずにそっけなく言う。
そんなハーマイオニーに、フンと鼻を鳴らすとハーマイオニーの隣に腰掛けた。
それでも本を読むのをやめようとしないハーマイオニーにドラコはむすっとしてハーマイオニーの腰に手を回す。
「・・・離れて?」
ドラコは、その言葉に眉を上げた。
「何だよ。二人でゆっくりいられるのはこういう休みくらいなのに・・・。こんな時も君は勉強なのかい?」
不服そうに手に力を入れると、ハーマイオニーは観念したようにため息を吐き出すと本を置いた。
その表情はわがままを言う子供に向けられるようなもので、更にドラコの眉間の皺を深くさせる。
「これは魔法薬学の本なの」
言いながらハーマイオニーは傍らに置いた魔法薬学の本をいささか乱暴に叩く。
「ふん、だから何だ」
だから何で本にばかり向かうのか。さっぱりその理由が見えて来ないことに不満を感じながらも大人しくハーマイオニーの言葉の続きを促す。
「あいつの科目だからこそ手落ちのないように、完璧にしておかないと・・・」
だから離れて?と再度問うハーマイオニーをドラコは押し倒した。
「もう、ドラコ!」
ハーマイオニ―は慌ててひっつくドラコの体を引き剥がそうとする。
が、ドラコも意地でも離れないと引っ付いてくる。
しばらくじたばたしていたハーマイオニーだが、やがて無駄だと気がつくと大人しくドラコの腕の中に納まった。
それを満足げに上から見下ろし抱きしめる。
「寒いんだよ」
笑いながら言うドラコはちっとも寒そうに見えない。
「そうかしら」
ぽんぽん、と回した手でドラコの背中をたたきながら言う。
部屋には暖炉があって火がたかれているしドラコはセーターを着ているし・・・・
何だか、かえって・・・・
「暑そうに見えるわよ」
しばらくハーマイオニーの言葉を味わうように、ふむ。と呟いて彼女を見下ろしていたが、『暑そう』という言葉に何かひらめいたのか、ハーマイオニーから体を離すと、なんとセーターを脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと何してるのよ!」
慌ててシャツ一枚になったドラコに言うが、当のドラコはと言うと、
「寒い」
と、そんな勝手なことを言って再びハーマイオニーに抱きついてきた。
その顔は寒さを湛えた顔などではなく、にやりと微笑んで・・・いや、意地の悪い笑みを浮かべている。
流石にこれには呆れたハーマイオニー。
はいはい、と気の無い返事をしつつ本を読むのは諦めたようで、大人しくしている。
「最初からこうすれば良かったんだな」
暴れることなく腕の中に収まっているハーマイオニーの髪に顔を埋め、満足そうに目を閉じて言う。
「・・・あなた、頭悪いわよ?」
「何だって?」
反論するドラコの顔から笑みは消えない。
ふぅっとため息を溢すと、近づいてくるドラコの顔に合わせてゆっくりと目を閉じた。
Fin
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