君に送る曲



「君に、贈りたい曲があるんだ。」


そう言って少年は少女へと近寄っていくが、少女は顔を歪めて後ずさりする。
少年は顔を歪めながら、さらに少女との距離を縮めようとする。


「僕は、君の事を本気で・・・」


「嘘、貴方は来なかったじゃない。
逃げたじゃない!!」


少女は思い切り叫ぶ。




「違う。僕は・・・・」


「何も聞きたくないわ!
黙って!!!」


少女は耳を塞いでしゃがみ込んでしまった。
目の前の少年はおろおろして手を彷徨わせる。





「ほら、やっぱりあなたは何も出来ない。
今も。そしてこの前も!」


少女は少年を忌々しそうに見上げた。


「貴方は、やっぱり『家』の方が大事なんだわ!」




少年はその言葉に俯いて黙り込んだ。






「・・・・大嫌いよ・・・・貴方なんて、大嫌いよ!」




少女は叫んで走り出した。



































というところで、ドラコは目を覚ました。

今の夢の衝撃の強さに暫く呆然とする。








まるで今の僕達みたいじゃないか!!









父に怯え、中々ハーマイオニーとの関係を公に出来ない不甲斐無さ。
ハーマイオニーもあの少女みたいに心の中では悲痛な叫びをあげているのだろうか。


そう思ってドラコは胸を押さえた。






だが、すぐに落ち着きを取り戻すと、大丈夫だ、と自分に言い聞かせてもう一眠りしようとベッドに横になった。






が、少女の叫びが耳をついて離れない。
よくよく思えば二人の服装はホグワーツの制服だったような気がする。
それも、グリフィンドールとスリザリンの。



それが余計、人事ではないように思えてドラコは溜息をついた。



「まったく・・・・何だってんだ・・・・・」



どうも、二度寝は出来そうにない。



「はぁ・・・・・」



ドラコは諦めてベッドから出た。


時計は午前5時過ぎを指している。
たまには早起きをしても罰は当たらないだろう。


のそりのそりと怠慢な動きで身支度を整える。
同室の人間は未だ夢の中だ。


ドラコは散歩で時間を潰すことにした。



























夜中。

音楽室からピアノの音が聞こえてくる。


という噂が流れたのはそれから間もなくだった。







ドラコは夢を見た次の日から密やかに流れる噂に、唯の噂で済ませられないような気がしてならなかった。

しかも、夜毎にドラコは夢を見るのだ。
あの夢の続きを。



















今日の夢では結局女が禁じられた森に迷い込んで死んでしまったと、男が悲しみに暮れていたが・・・。

実際にそんなことが本当にあったのか!?



この疑問に、珍しくドラコはいてもたっても居られなくて、放課後、図書室へと急いだ。
もちろんそこにはハーマイオニーが居て、余計夢のことが気になってしまう。

早速学校の過去の記録を見ようと、関連の本を調べだす。


隣に座ってきたと思ったら珍しく本に没頭する(しかも興味の無さそうなホグワーツの卒業生の記録!)ドラコに首を傾げたが、ハーマイオニーはハーマイオニーで、今手の内にある本が気になってしょうがないため、ドラコを放っといて自分も本に没頭する。

それには勿論不服のドラコだが、今はさっさと事をはっきりさせたい。







「こいつか・・?」


やっと、その人と思わしき少女を見つけた。

金髪の髪に青い目。
意志の強そうな瞳であるが、どこか哀しそうな顔。

少女は16歳で他界したと書かれてある。
しかも禁じられた森で。



ドラコはそれを見て言葉を失った。



禁じられた森。
そう、夢で見たとおり。



ドラコは急いで少年を探した。


少年は茶色の髪のすらりとした少年だった。
優しそうな風貌。

そして、16歳で他界と書かれてあった。
死因は、見当たらない。






「どういうことだ・・・?」


思わず思っていたことを呟いてしまったのに気づくには、大分時間がかかった。
何故ならハーマイオニーがそれに対する疑問の声をかけるまで気づかなかったのだから。


「ちょっとどうしたのよ」


ハーマイオニーは突然そう呟いたっきり黙りこくるドラコを訝しがって小声で言った。


「い、いや・・・・。」


狼狽しながらもそう言って、はっと閃く。


噂の真偽を確かめようと。






「グレンジャー。今夜付き合え。」



そうして、今夜二人で音楽室へと向かうこととなった。












































カツカツ・・・・と、夜中の校内に二人の足音が響く。


ハーマイオニーはハリーに頼み込んでマントを借りていて、なんとか此処までフィルチに見つかることなく来ることが出来たが・・・


「・・・・まったく、ろくに説明しないで、何のつもりよ。ハリーにマントまで借りて来いなんて・・。」


ひそひそと文句を言うハーマイオニーの口を指で押さえると、遠くの音楽室が存在する塔を指した。


「すぐに分かるから静かにしてろ」


そんなドラコに憤慨するが、黙ってドラコに続く。と、音楽室からピアノの音が聞こえてくるのに気がついた。


ハーマイオニーは驚いた顔でドラコは見る。と、ドラコは険しい顔で音楽室へと近づいた。








































嗚呼・・・・また連載始めちゃったよ・・・。
ほんと、すみません(汗)
後先考えない連載ばかりで、自分の首絞めてます。
でも、こういう話を書きたかったんです!
ちょっと怪談チックな。
ではでは。