フウは一人ふらふらと町を散策していた。
「いい天気〜」
空を見上げるとさんさんと降り注ぐ太陽。
フウは目を細めながら空を見上げた。
「こんな日には団子、よね。どっか美味しい団子屋さんはー・・・・」
と、きょろきょろと周りを見回していると、ふいに声を掛けられた。
「オイ、ねーちゃん」
その声と同時に、いきなり腕を掴まれ、細い路地に引き込まれて、フウはその主を目を見開いて見た。
「な、何よ。」
二人組みの男は顔ににやにやと下世話な笑みを浮かべてフウを見下ろす。
「これから俺らいい所に行くんだけどよ、ねーちゃんも一緒にどうだ?」
と言って、手にあるナイフをフウに見せ付ける。
「何なのよ、あんた達!」
フウは掴まれている腕を放そうと、腕に力を入れて振り払おうとするが、益々力を入れられるだけ。
その痛さにフウは顔をしかめる。
「ちょっと、離しなさいよ!あんた達みたいな奴と行くわけないでしょ!バッカじゃないの!?」
「何だと!?」
男達は逆上して、無理やりにでもフウを連れて行こうと、謀って一人がフウを抱き上げた。
「離してよ!!」
暴れてめちゃくちゃに足をばたばたさせたり、手で男の顔を叩いたり抵抗する。
すると、もう一人の男がフウを大人しくさせようと口を押さえ、手を掴んだ。
「むう――ッ」
フウは思い切り口を押さえる男の手に噛み付いた。
「ってぇ!!こんの女―ッ!!」
その痛みに男は声をあげて慌てて噛まれた手を見た。
そして、男は怒りに顔を赤くして手を上げ、フウは殴られる、と目を思い切り瞑った。
が、一向に予想していた衝撃が来ない。
恐る恐る目を開いていると、フウを殴ろうとする男の手を見覚えのある手が掴んでいた。
「オメェは何大人しく絡まれてんだ。」
そして、手を掴んでいる男を蹴飛ばして、フウを抱きかかえている男の顔に一撃お見舞いして、男が沈む前にフウを支えた。
「悪ィが、コイツは俺んなんだ。」
それぞれ攻撃を受けた箇所を押さえながら立ち上がる男共を見下ろしながらムゲンは言った。
「何だてめえ」
男達は突然現れて獲物を横取りした男・ムゲンに敵意の視線を向ける。
ムゲンはそんな視線をさらりと受け流すと、フウを背に庇って剣を引き抜いた。
明らかに殺す気満々なムゲンに慌ててフウは声をかける。
「ちょっと、殺しちゃ駄目よ!」
その言葉にムゲンは不機嫌そうに眉を動かして言った。
「あァ?こいつら何しようとしたか分かってんのか?殺されて当然だろ」
「とにかく駄目だってば!」
ささいな喧嘩を始める二人に男は無視されていると感じ、頭に血が上ってムゲンに斬りかかった。
それをムゲンは返り討ちにしてやるが、フウの主張どおり、殺しはしない。
呆気なく気絶した二人の男を尻目に、ムゲンはフウを見た。
「なっ何なのよ〜」
フウはあまりにもじーっとムゲンが見つめてくるものだから、頬を膨らませて言った。
「なァに泣いてんだよ。このバカ」
はらりと、安心感からか、知らず知らずのうちに流れる涙を手でごしごし拭ってやりながらムゲンは言った。
「なっ泣いてなんかないわよ!!」
フウはムゲンの手を振り払うと、自分で涙を乱暴に拭った。
「ったくよ、ぼけーっと歩いてっからこういう事になんだろーが。俺が来なかったら・・・・ってオイ、泣くなって!!」
ムゲンは涙を流し続けるフウに戸惑いながらもなれない手つきでフウを引き寄せた。
「う〜〜〜〜〜」
ムゲンの胸に顔を埋めながら、ムゲンの服で鼻をかむ。
「あっ おめっ 汚ねェ!」
ムゲンは嫌そうな顔してそう言いながらも、決してフウを突き放したり、離そうとはしない。
「お前は俺がいねェと駄目みたいだからよ、一緒にいてやるよ」
照れ隠しにぐずるフウの頭を左手で自分の胸に押さえつける。
ぐすっ
「オイ、聞いてんのか!?」
恥ずかしいのを忍んで言ったのにも関わらず鼻を啜るのみで何も言わないフウに言う。
「ん、アリガト・・・・」
「・・・・・あァ」
微妙な雰囲気が流れてフウはムゲンの胸から顔を離した。
「お、お腹空いちゃったね。お礼にお団子、奢るよ?」
「ん? あァ」
そうして、二人は肩を並べて歩き出した。
その時にムゲンが手を握ろうかどうしようか、と悩みながら右手を彷徨わせていたのは、また別の話。
終
|