憎いほど愛しいあなた #2

その日の食堂。
夕食を食べに集まった生徒でごった返す食堂には、魔法薬学のレポートに生気を抜き取られてしまったようなハリーとロンの姿も確認できる。
ハーマイオニーは正面と隣に座る二人を交互に見て、呆れ顔で「しっかりしなさいよね」と言っている。




くそ、あの二人、またグレンジャーと・・・。
ほらみろ。いつでもあいつらは一緒にいられるんじゃないか。
僕とグレンジャーはあの、放課後にしか会えないのに・・・・。


ドラコは悪態をつきながら皿の上にとったパンプキンサラダをフォークで乱暴に突き刺した。

皿が割れかねない程に力をこめるドラコに周りが一斉にドラコを見る。

「ど、どうしたの?ドラコ」

こんなドラコに話しかけないはずがないパンジー。
何も知らないパンジーは無謀にも絶不機嫌なドラコに迷いもなく話しかける。

「何でもない」

冷たく突っぱねてサラダを口に運ぶ。
その口調には怒りが篭められていて・・・・
パンジーは口を尖らせて黙った。

邪魔なパンジーを黙らせてあの3人の言葉に全神経を集中させる。
が、如何せん距離がある。

いらいらは募るばかり。

ちらっと視線を向けると、親友のために料理を取るハーマイオニーの姿が。
嬉しそうに微笑むハーマイオニー。


あの横にいるべきなのは僕のはずなのに。
何で、いつもいつもいつもあいつらが彼女の隣にいるんだ!!

ぎり、と歯をかみ締める。





食事の時間は終わり、各々自分の寮に帰り始めた頃。
もう半分ほどに減っただろうか。
ハーマイオニー達も寮に帰ろうと席を立った。
立ったものの、何をどう間違ったのか、ハリーはよろけてしまった。
そして更に何を間違ったのか隣にいたハーマイオニーを押し倒す形に。

フレッドとジョージが ヒュー と煽る。
ロンは面白そうに笑っている。

「ちょっと、ハリー大丈夫?」

自分の上のハリーに呼びかける。

「ハーマイオニーこそ」

ハーマイオニーからどこうと体を動かした。
ふと目に入ったのは誰かの影。

誰だろう?

と、見上げて、その人だと理解するまでに数秒は擁した。
グリフィンドール生のテーブルで見るとは思っていなかった人だから。



マルフォイ とハリーが言うよりも早くドラコがハリーを殴り飛ばしていた。
ハーマイオニーは殴った本人を見てさっと血の気が引くのを感じた。

「マルフォイ!!」

ロンやフレッドやジョージ、その場にいたグリフィンドール生、スリザリン生、そのほかの全員もがドラコを見る。

「やめて!!」

急いで立ち上がるとマルフォイを止めにかかるハーマイオニー。

「グレンジャー!こいつが今君に何したのか分かって言ってるのか!?」

完全に頭に血が上っているドラコの腕を必死に掴む。

「違うのよ!あれはハリーのせいじゃないわ!!」

「どう見ても――」

「誰かが魔法で悪戯したのよ!!」

ぴた、とドラコの動きが止まる。

「魔法だと・・・?」

ドラコの視線がハリーからハーマイオニーに移る。
ハーマイオニーは肯定するように大きく頷いた。


「魔法で悪戯だと・・・?一体誰がそんな下らんことを・・・」


眉を寄せて呟きながら周りを見回す。
と、明らかに挙動不審なフレッドとジョージが目にとまった。


「まさか・・・・」


二人にわしげな視線を投げかけるドラコ。
ドラコの鋭い視線を受け、ぎく、とフレッドとジョージは肩を震わした。
その形相の恐ろしさに、「い、いや、可愛い悪戯じゃないか」と冷や汗をかきながら言って走って逃げ出した。


「待て!!」


今にも噛み付きそうな顔で大声をあげるドラコ。
だが、フレッドとジョージの逃げ足の速さは類を見ない。
そそくさと走り去る二人をドラコは追いかけようとするが、その前に何かを思い出したように、ハーマイオニーに向き直った。


「?」


訝しげにドラコを見ると、ドラコは見せ付けるように軽くキスをした。


「グレンジャーは僕のだからな」


ふん、と誇らしげに鼻を鳴らしてハリーとロンを見据えながら言うと、フレッドとジョージを追いかけて颯爽と食堂を後にした。















その後残されたハーマイオニーには周りからの視線、視線、視線・・・
特に親友からの視線が痛い。

ハーマイオニーは泣きそうになりつつも、投げかけられる質問の束に、曖昧に返事をしながら、ハリーとロンの誤解を、というか、真実を話すべく、二人を強引にひっぱって寮の談話室に行ったのだが、まず食堂を出るのも大変だったが、談話室にたどり着くまでも大変だった。
食堂には、もうパンジーや、先生方がいなかったのが何よりも救いだったが、生徒がまだ半分もいたのがまずかった。


「ちょとハーマイオニー!!」
「どういうこと!?」
「グレンジャー!?」
「え?マジで!?」
「有り得ない!!!」


口々に叫ばれる言葉を目を瞑って聞き流し、たかる人々を掻き分け、突き刺さる人々の視線、親友の視線に耐えてやっと寮に入ったのだ。

それから寮内で話しかけてくる人をジニーの助けも借りて上手くかわし、やっと談話室で二人と話せることになった。


 



「あのね、落ち着いて聞いてくれる?」


「落ち着くも何も・・・・」


顔を真っ赤にして憮然として言うロン。
仕方もない。
何たって相手は宿敵マルフォイ。


ロンは混乱してぐるぐるする頭を抱える。


それとは反対にハリーは落ち着いている。
そして心配そうにハーマイオニーとロンを見比べると、ロンを「まあ話を聞こうよ」となだめ始める。


「何でそんなに落ち着いてられるんだよ!!!」


こんなに混乱してる僕が馬鹿みたいじゃないか!
ハリーの落ち着き払った態度が癪に障ったのか、激しくまくしたてる。

そのロンの発言にハーマイオニーに確かにそうだと首をかしげる。


「いや、僕はさ、何となく分かってたし・・・」


え!?


ハーマイオニーとロンは呆気に取られる。


いつから!?
ああ、やっぱり毎日のように図書館に行ってたのがいけなかったのかしら。


心の中でざわざわと考えが浮上してくるが、それをロンの声が遮る。


「何だって!?ハリー、何で僕には何も言わないで・・・ってまさか二人でグルになって僕だけに秘密にしてたってこと!?」


「違うわ!!」


そんな誤解を生んで更に状況を悪化させたくないハーマイオニーは思わず叫んだ。
そんなハーマイオニーにびっくりしてロンもハリーも黙る。


「違うの・・・だって私も今ハリーが、その、私たちのことを知ってるって知ったんですもの。とにかく、私の話を聞いて頂戴」



ロンを落ち着かせ、また、自分も深呼吸をして落ち着かせるとハーマイオニーはゆっくりと、言葉を選びながら話はじめた。< br>









「・・・・・・という感じで、実は、その、半年くらい前から付き合ってるの」


話を大人しく聞いていた二人は度合いに違いはあるもののショックを受けているようだ。
特にロンのショックは大きい。
何せハーマイオニーに密かに思いを寄せていたのだから。
ロンは体を震わせて立ち上がった。


「僕は・・ハリーが認めても、僕は認めない!!何でよりにもよってマルフォイなんだよ!!!」


ロンは一気にまくし立てると足音荒く談話室から走って出て行ってしまった。

ハリーはハーマイオニーに、僕にまかせて。と言うとロンを追って出て行った。








ハーマイオニーはとりあえずはロンのことはハリーに任せることにして、一旦自分の部屋に戻ることにした。
パーバティとラベンダーからの質問の攻撃を予感して部屋の前で一旦入るのをためらったが、ここにいても埒が明かないと、思い切って中に入ると、そこにはジーにーしかいなかった。


「ハーマイオニー!」


ジニーは座っていた椅子から立ち上がるとハーマイオニーの方へ歩み寄った。


「ジニー・・・」


「いきなり、あんなことがあって大変だったわね」


ジニーはいたわるように言うと、ジニーはにっこり笑って言った。


「皆今凄く騒いでてしばらく大変だろうけど・・・私はハーマイオニーの味方だから。」


そして、今日はもう休んだら、と言って自分の机に戻った。


「ありがとう、ジニー」


ハーマイオニーはそう言って大人しく着替えて床につくことにした。

















そして翌日。

こうして私は対面したドラコに怒りの視線を向けている訳だ。
彼は私の表情から全てを汲み取ったらしく、(つまり私がこの上なく怒っているってこと!)顔を青くしてこっちを見てるって訳。


「マルフォイ、歯、食いしばった方が良いかもよ?」


「は?」


間髪入れず私はドラコの頬を殴ってやった。
グーじゃなくて平手にしたのはせめての情け。

彼は唖然と私を見て、それから顔を怒りに真っ赤に染めて、私をひっぱって野次馬達から遠ざかった。



これからどんな弁解がくるのか。
それともどんな罵倒が飛んでくるのか。

楽しみだわ。









fin?
















多少長かったような気がします・・・。
でも書いてて楽しかった・・・かな?
何か、途中で飽きてしまった覚えがあるよーな無いよーな。
無理やり終わらせた感が否めない・・・。
そのうちちゃんと続きを書くかもしらんです。
どうでしょう?リクがあれば、書くかもね。
だって、ロンとはまだ和解してなくない?
どうするのよ!!
とにかくそれは後日・・・

2005.11.24
久世