憎いほど愛しいあなた


彼に、憎いほど愛しい彼に偶然にも廊下でばったり出くわした。
彼は顔を青くして私の表情を伺っている。


何よ
私がとって食うとでも?
失礼しちゃうわ。


涼しい顔しちゃって。
ああ、でも顔色は隠せないみたいね。
青いわよ。


周りも興味深々に私たちを見てるし。
ちょっと見世物じゃないのよ!
皆ゴシップ好きなのかしら?
放っといてくれないかしら?
私は、今、私の前で顔を青くしている彼に一言。
いいえ、一撃食らわしてやらなきゃ気がすまないのよ!


ああ、、、、全くいい加減にしてよね。
何なの?ドラコ。
まさかこの野次馬に怯えてるんじゃないでしょうね?
どうしよう、父上にばれる〜〜なんて、思ってたら本当にぶっ飛ばすわよ?
そんな風になるくらいだったら、最初からあんなことしなけりゃ良かったのよ。
みんなの前で、あんなこと・・・・・。










放課後のホグワーツ。
ハーマイオニーは図書室に向かっていた。
短い短い彼との逢引き。
自然と浮き足立つハーマイオニーの図書室へと向かう足は心なしか速い。
すると後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。


「ハーマイオニー」


その声にハーマイオニーは振り返らない。

この声の主は、さっき彼の親友と魔法薬学のレポートに手を焼いていたから。
今日が彼と会う日だとかは抜きにして、最近勉学を怠けている彼らに、また自分に助けを求めに来たのかと、少しうんざりしていたから。


私は駆け込み寺じゃないのよ!!


振返らないハーマイオニーにロンは魔法薬学のレポート片手にハーマイオニーに再び呼びかける。
すると仕方なく、また?とでも言うようにハーマイオニーは振返った。


「へへっ」


バツが悪そうに苦笑すると、魔法薬学のレポートをひらひらさせた。
そのレポートは真っ白で
あまりにも綺麗に真っ白だったので、ハーマイオニーはぴくっと怒りが込みあがるのが自分でも分かった。


「ロン!そのレポート明日までなのよ!?」


「分かってるよ。だから君のところに来たんだろ?」


ね、ハリー?


ロンが曲がり角に隠れていたハリーに呼びかけると、ハリーもバツが悪そうに苦笑しながら出てきた。


「あなたもなの?」


咎めるように二人を見ると、二人はひたすら平謝り。


「ごめん。あのさ、今週は練習がいつもより忙しくて・・・・」


「そうなんだよ!今回だけだから、お願い!!」


一向に頭を下げて、上げようとしない二人に盛大な溜息をつく。


「何度その『今回だけ』を聞いたかしら・・・」


びくっと二人の方が揺れる。

それもそのはず。
その『今回だけ』をつい先週に2回、先々週に1回したのだから。
そしてついつい彼らの頼みを聞いてしまうのもハーマイオニー。
彼らの為にはならないから。。。と、やめようと思いつつ、結局は彼らが困っているのを見過ごせないのだ。
そして今回も。


「仕方ないわねぇ・・・。いい?ヒントをあげるだけだからね?後はちゃんと自分で考えてよ?」


にやり。

二人の少年は互いを見合わせる。


そして、二人の少年の目に入ったのは、ハーマイオニーが持つ数冊の分厚い本。


「何その本。もしかして今から図書館に帰しに行くところだったの?」


ここは図書館まであと1分もかかるかかからないかの所。
それでなくとも最近図書館に入り浸るハーマイオニーの行動からしたら、今から図書館に向かうのは一目瞭然。


「じゃぁ図書館でレポートしようよ」
「そうだね」


えっ?

まずい

図書館には

マルフォイが・・・・


「い、いいわよ。この本はいつでも」


珍しい言葉に二人は顔を見合わせる。
ハーマイオニーは無類の本好き。
いつもなら、こういうときは無理にでも本を返しに行って新しい本を借りて・・・。
二人は、どうやらハーマイオニーは遠慮しているのだと取ったようだ。


「大丈夫だよ。僕らもたまには図書室で本でも見てみることにするし。」

「そうそう、ハーマイオニーが本を借りるまで待ってるよ」


まずい。
非常にまずいわ。
此処で無理に引き止めても変だし・・・。
もう、いいわよ。行ってやるわよ。


「そうね、じゃぁすぐ本借りてくるから。」


ハリーとロンはハーマイオニーの本を持つと、三人で図書室へと入っていった。








図書館に入ると、まばらな人。


たぶんあそこの奥にマルフォイはいるのよね・・・。
絶対ハリーとロンはあの奥には行かないから・・・。


案の定、「じゃぁ、終わったら呼びに来てね」と言ってハリーとロンは反対側に向かって行った。

ほっと胸をなでおろすと、急いでマルフォイの待つ奥に行く。


はぁ・・怒ってるかしら・・・




「おい、何であいつらがいるんだ」


奥に行くなり小さい声で言われたのはこの言葉。


ああ、やっぱり怒ってるのね。
でも悠長に話してなんかいられないわ。
さっさと適当な本を持って行かないと。


「ごめんなさい。どうしても断れなくて・・・。」
「あいつらとはいつでも一緒に入れるだろ」


分かってるわよ。
そんなこと。
でも、仕方ないじゃない。断れなかったんだもの。


「本当にごめんなさい。すぐ戻らなきゃいけないの。怪しまれちゃうわ」


そばにあった本を2冊掴むと、ハーマイオニーは、ドラコの頬に軽くキスをしてさっさと行ってしまった。


そしてハリーとロンを捕まえると、魔法薬学のレポートをするべくそそくさと図書室を後にした。




「くそ、ポッターにウィズリー・・・」


図書室には怒りの炎を湛えるドラコが残された。






続く