Lost Eden #1


絵を見ていた。
美しい絵を、その絵だけを見ていた。

作者も分からない絵。

一人の少女に、木製の小さな人形が白い、1輪の花を差し出している絵。

お店で、一目見て、何故だか目を離せなくて、買ってしまった絵。

全く動くことなんてないけれど、私はこの絵が気に入っている。

ホグズミートで見つけた絵。









「ハーマイオニー、それ、素敵ね」


ジニーがじっと壁に掛けた絵を見つめているハーマイオニーに話しかける。
ありがとう。と、ハーマイオニーは言って、絵からジニーへと目を移した。


「それに、その女の子、何処と無くハーマイオニーに似てるわ」


ジニーからそんな言葉が出てきてハーマイオニーは驚いた。
何故なら、その女の子の髪は金色で、自分のぼさぼさな髪とは正反対のストレートの髪だったからだ。


「全然違うわよ」


笑いながらハーマイオニーは言った。
どう見ても自分には見えない。


「そう?何ていうか、見た目じゃなくて、雰囲気の問題よ?」


そう言われて、そうかしら、と唸りながら絵を眺める。
そうよ。と、ジニーは自信たっぷりに言った。


「ちょっと二人とも、そろそろ寝るよ?」


パーバティとラベンダーがベッドから顔を覗かせて絵を眺める二人に言った。

















「今夜、ラインラントに向かいます」


金色の髪、紫色の瞳を持つ少女は、毅然と言い放つ。


「それがどういうことか分かってるのか!?」


少女に黒髪の少年は焦った表情で怒鳴る。


「えぇ、分かっています。でも、わたくしは・・・」









と、少女が言いかけて途切れた。
ハーマイオニーの意識が覚醒したのだ。


「あの女の子って・・・」


壁に掛けられた絵に目を向ける。
凛とした瞳の少女。


「唯の、夢?」


思い入れが強いから、夢に出てきたのだろうか?
でも、あんな少年は知らない。


綺麗な青い瞳にもかかわらず、内には燃えるような意思を持つ、黒髪の少年。


「やっぱりこの絵が原因なのかしら・・・」


そっとベッドから立って絵に触れた。
触れた絵は、寝る前見たときとは違って、悲しそうな顔をしているように見えて、はっと手を離した。

しかし、不思議と気味の悪い感じはしなかった。
それは、あの二人から全く妙な雰囲気、怖い感じが全くしなかったから。
むしろ、興味が沸いてきた。


「ラインラントって言ってたわよね・・・」


ハーマイオニーは呟くと、いてもたっても居られなくて、明日まで待つことなんて出来なくて、絵を持って寮を抜け出した。










こっそりと寮を抜け出して、東の塔へと向かった。

以前ダンブルドアとマクゴナカルがハーマイオニーの2年間を通しても要望により、また、2年間主席を通したことに免じて、研究の為に東の塔に収められている蔵書と書斎を自由に使用できるようにした。
ハーマイオニーは図書館においてある内容に引けを取らない、また、自分の興味のある分野においては図書館以上の品質を誇るこの東の塔が気に入っていた。

図書館みたく、テスト前に人が込み合うこともないし、マダムピンスにぶつぶつ独り言を言っても注意されることも無い。


まさに楽園!!


こう、ハーマイオニーは東の塔を形容している。



この楽園に納められている歴史書目当てにハーマイオニーは東の塔へと向かう。


辺りは真っ暗。
魔法で火を灯して道を行く。













・・・・あの穢れた血、何してるんだ、こんな時間に。


ドラコは木陰に隠れてハーマイオニーを見ていた。
外の空気が吸いたくなって寮を出てみたら遠くに光が見えたから来てみれば大きな額を抱えて歩くハーマイオニー。

何かしているのか、粗探しのつもりで着いてきたものの・・・。

何をしているのか一向に分からない。



まぁいい。着いていけば分かる。



と、ついていくと一つの塔。




ここは・・・グレンジャーが使っているという塔・・?


前に噂で聞いた。
グレンジャーに一室が与えられたと。
しかし、そのことに関しては確たる話は無く、そのまま存在を忘れていたのだが。


ふん。


ドラコは皮肉るように鼻を鳴らすと、ハーマイオニーが入っていったドアへと近づいた。

ドアノブをまわすとドアが開いた。
どうやらハーマイオニーは急いでいて鍵を掛けるのを忘れたらしい。


「無用心な・・・」


何故かそこに腹立たしさを感じて念のために鍵をかけた。
階段の上から明かりが漏れてくるのが分かる。
どうやら二階の部屋にいるらしい。


脅かしてやろうとそっと階段を上って部屋を覗く。
と、絵を傍らに置いて本を何冊も読み漁るハーマイオニーの姿。
全くながめていても何をしているか分からなくて、思い切って中に入った。

しかしハーマイオニーは本に没頭したまま。

ますます腹立たしさを感じて声を掛けた。


「おい」


「きゃぁ!!」


まさか自分以外に人がいるとは思いもしなかったハーマイオニーは悲鳴をあげてドラコを見た。


「な、なんだ、マルフォイじゃないの」


ばくばくする心臓を手で押さえてほっと胸をなでおろす。


「驚かせないでよね」


はぁ、と心を落ち着けるように息を吐き出して苦笑しながらドラコを見上げる。
ドラコは、してやったりと思いながら、傍らにある絵に目を向けた。


「お前、何してるんだ?」


眉を寄せて、ドラコは少し馬鹿にしているような顔で言った。








続く








勝手に設定を作ってしまいました。
ふふん、やりたい放題してやるさぁ〜
何だって小説なんて自己満ですからな。(開き直り)
付き合ってくれる人がいるか甚だ疑問ですが・・・・。
感想などなどお待ちしております。

2005.11.5
久世