ムゲンは最後の酒を豪快に煽ると、乱暴に「荷物」をひっつかみ店を出て行った。
「いったいじゃないの、離しなさいよ!!」
「荷物」もとい、フウは乱暴に自分を引きずるムゲンに怒鳴る。
ムゲンはうるさそうに顔を顰めて、これまた乱暴にフウを放した。
「ちょっと!!あんたねぇ!!!」
再び抗議を訴えるフウに一言。
「おめぇが離せっつったんじゃねーか」
「離すって言っても、もうちょっとやり方があるでしょ!?」
離されたときに盛大に尻餅をついて痛めた腰をさすりながら立ち上がる。 その顔は不満に満ち満ちていて、ムゲンはこれから来るであろう非難の嵐を予感して顔を歪めた。
と、光が急に影った。
「ん?」
急に太陽の光が自分に当たらなくなったのを不審に思ってムゲンが振り向くと、大男が立っていた。 その男の影にムゲンが入っているため光が絶たれてしまったのだ。
「何だァ?お前」
訝しげに顎を手で擦りながら大男を見上げると、後ろから顔に最近したためたであろう痣をもつ男が出てきた。
その痣男を見て、ムゲンは考える。
「ん〜〜〜〜〜????」
眉を寄せて考えるが中々出てこない。
そんなムゲンに痣男は体を怒りの為振るわせると口を開いた。
「この痣を忘れたのか!!!お前がつけたんだろうが!!!!」
その青くなっている頬で、ムゲンはやっと思い出した。
「あ、お前、この前の・・・」
「誰よ、こいつら。知り合い?」
ムゲンに隠れ、顔だけ出してフウが尋ねる。
「あァ、この大男は知らねぇがあいつは知ってるぜ」
大男の傍らに立つ男を指し示して言葉を続ける。
「この前、ちっと金をくれた奴だ」
「ちょっと待てぇ!!!」
その説明に痣男は声を荒げた。
「お前なァ!!この痣をつけやがって!!!何が『くれた』だ、こいつ、俺をカツアゲしやがったんだよ!!」
フウは痣男の説明にやっぱり、と納得するとムゲンに
「またやったの?」
と呆れ顔で呟いた。
「ふん、これが俺様の稼ぎ方よ!!」
偉そうに言うと、またたっぷり稼いできてやるぜ!!
と嬉しそうに言って剣を引き抜き、フウを後ろに押しやった。
「ほどほどにねー」
フウはひらひらと手を振りながら言うと、座れそうな石段を見つけて腰を下ろした。 そこからはムゲン達がはっきりと見える。
頬杖をついて眺め、思う。
「アイツ、ほんとに楽しそうに喧嘩するわねー」
まァそれでこそムゲンなのだが。
「琉球ってとこにはあーゆー喧嘩っ早い奴がいっぱいいるのかしら」
生来、生まれ持った性分なのか、はたまた土地柄的なものなのか。
ぼんやりと考えていると、ムゲンが意地悪く笑みを浮かべながらフウの前に立っていた。
「・・・・もう終わったの?」
「おう」
誇らしげに手にチャリチャリ音を放つ袋を持って言う。
「これで今日も恙無く過ごせるぜ?」
喜べ!!
子供のように言うムゲンに溜息ひとつ溢すと、フウは立ち上がってムゲンからお金の入った袋を取った。
「あ?」
空いた手で空を掴む。
「全部使っちゃ駄目よ、倹約・節約しなきゃ。」
いつも考えなしに全て使ってしまうムゲンに、フウは偉そうに言ってお金を懐にしまった。
ムゲンは、ちぇ、と呟くと、宿を探しに歩き始めたフウに続いた。
fin
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