女はつかつかと吹っ飛ばしたレイジの方へと歩いて行った。
「いや、そこの御仁がそれは良いヤツでな、迷っていた俺を・・・・・って俺は一応上司だぞ!!こんな扱いあるか!?」
レイジはしどろもどろに言い訳していたものの、実は自分が上司だったという事実を思い出していきなり強気に出る。
「だから何よ。・・・・・大体、はぐれてから私を探さなかったのだって、単に仕事が嫌だったからじゃないの?」
それに、ぎく、と言わんばかりに肩を震わす。
その視線は宙を彷徨っている。
「い、いや、俺は探したぞ。多少は。」
「はいはい」
女は適当に受け流すと同時に一発頭を殴る。
「いって〜〜!」
悲痛な声が上がるが気にした様子は無く、女はムゲン、フウ、ジンに向き直った。
「どうやらあれ迷惑かけたみたいで・・・・」
のそりと後ろからレイジが起き上がってくる。
「あ―、コイツはイラリアだ。」
レイジは、脈略も無く自分の横に居る女・イラリアを指差しながら言う。
「はぁ・・・・」
フウはとりあえず返事をするが、ふと、気がつく。
イラリアの髪の色に。
「てか、イラリアさん!その髪はヤバイわよ!異国の人は捕まっちゃうの!!」
と、大急ぎでイラリアのフードをがばっと被せた。
「えーと、とにかく、こっち!」
そう言ってフウはイラリアを引っ張って宿へと入っていった。
あとに残されたのはむさい男3人。
「・・・・・・そうなのか?」
問うレイジに
「・・・・あぁ」
「・・・・そうだ」
と二人は肯定する。
「「だが、お前は問題無い」」
自分もマズイのかなーと、自身の髪の毛を見たりしているレイジを見てムゲンとジンは言葉を揃えて言った。
「・・・・・そうか」
何処と無く残念そうに言うと、とりあえず中に入ろうと、3人はフウとイラリアを追って宿に入っていった。
「この髪はどうにでもなる」
イラリアはじぃーっと見つめてくるフウに耐え切れなくなって言った。
どうやらその目立ちすぎる髪をどうしたものかと思い巡らせていたようだ。
「そうなの?」
不思議そうな顔をするフウを見て、イラリアは黒い瓶を取り出した。
「元々この髪は目立つからね。一応持ってきたのよ。」
どうやら髪の染料が入っているらしい。
「でも・・・・・ここでは染められないわね・・・」
此処は宿の一室。
もちろんこんなところで髪を染めてしまったら染料が畳に飛んでしまうことだろう。
「案ずるな、俺が染めてやる。
さ、風呂に行くぞ。」
いつの間に帰ってきたのか、その声につられて振り向くと、襖のところに3人が立って、レイジが鷹揚に笑っていた。
「・・・・・・・。」
イラリアは無言で冷たい視線を送る。
と、フウが見かねて「じゃぁ、一緒に入ろっか」と笑顔でイラリアに言って、二人で風呂へと行ってしまった。
レイジはつまらなさそうに鼻を鳴らすと、先に部屋で寛いでいるムゲンとジンを見て、部屋に入っていった。
イマイチはっきりとしない二人の関係。
どうやら上司と部下、という関係らしいが、どう見てもそうは見えない。
そして、私的な関係もはっきりとはしない。
どうやらレイジはイラリアに好意を寄せているようだが(それは、フウとジン曰く、見る目が違うらしい)、はぐれてしまったにも関わらず、自分たちとのらりくらりと遊んでいて、切羽詰って探そうという感じは見られなかった。
どう考えても好意を寄せているのならば、すぐに探し出そうとするように思えるが・・・・。
つまり『良く分からない』のだ。
「えーとさ、イラリアさんと、レイジさんって・・・・」
イラリアの髪を染料で染めながらフウが言う。
「唯の上司と部下。」
きっぱりとイラリアは言うが、どうもそうは見えなくて、ついついフウは深追いしてしまう。
「・・・・恋人、じゃないの?」
イラリアはそれに訝しげに眉を顰めてフウを見た。
「だって、レイジさん、イラリアさんのこと大事みたいだし・・・。」
イラリアに向ける、見たことの無い優しい視線。まだ少ししかレイジといないからからかもしれない。
だが、レイジは何処か、人を探るような、若干冷たさを含んだ目をしている、という印象があったフウには、それが特別な感情があるからとしか思えなかった。
「大事・・・ねぇ・・・・・。まぁ、そうね。そんなものかもしれないわね。」
曖昧に言うイラリアに首を傾げてみるが、これ以上問うて良いものかと、思案する。
「・・・何ていうか、一緒にいる時間が長すぎて、私はあまりそうは思っていないのかもしれない。」
イラリアとレイジは見た目15歳くらいと20歳くらい。
一緒に居る時間が長い、とはどれほどのものなのだろう。
そう不思議がるフウを見て悟ったのか、イラリアは含みのある笑みを浮かべると、染め終わった髪を束ねて、一緒に湯船に浸かろうと、フウの手を引いて立ち上がった、
しつこく続けてすみません(汗)
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