はパスタを用意しながらクロロを見た。
クロロはさっき教えた読み書きを覚えようと机に向かっていて、後姿が見える。
「・・・何でも良いからさっさと帰ってくれないかしら・・・」
は溜息をついて、パスタを皿に盛りつけ始めた。
Space Sonic #3
「出来たよ」
がそう言うと、クロロは机に読み書きのノートを置いて、立ち上がった。
「麦茶で良い?ご飯の間はお茶って決めてるんだよね。」
は一応尋ねるものの、クロロの返事を待たずに麦茶をグラスに注ぎ始めた。
そして、それをテーブルに持っていく。
「美味そうだな。」
「まぁ、カルボナーラは結構簡単だし。」
がテーブルに着く頃にはすでにクロロも座っていた。
「前から聞こうと思っていたんだが、の親はどこにいるんだ?」
「んー、大体は海外かな。此処にもたまに来るけど、1年に1回あるか無いかね。そもそも此処は私の家であって、家族の家じゃないし。会うときはちゃんとした『家』で会うのよ。」
「何でそっちの家じゃなくて、この家(マンションの一室)を買って住んでるんだ?」
確かに、マンションの上の階で、そこそこのセキュリティ、立地条件にあるこの部屋は相当な金額だった。
「そうね、一人で住むには、あの家は広すぎるのよね。」
「・・・この家も十分広いと思うが。」
「とにかくいろいろ面倒なのよ。」
は苦笑しながら言って、一口パスタを食べた。
「で、もとの場所には帰れそうなの?」
はクロロの「どうやら俺は異世界に来てしまったらしい」発言を疑うことなく信じていた。
「いや、今のところは分からない。」
(まだ居座るつもりかしら)
「今、何か俺に失礼なことを考えただろ」
「いいえ?」
さらりと否定の言葉を返したが、クロロは不審そうにを見てくる。
「・・・・・そういえば、コレ、クロロの?落ちてたんだけど。」
は話を変えようと、クロロに赤い宝石を見せた。
今日の朝、リビングに転がっていたものだ。
「いや、違う。・・・・しかし、似たのを持ってるな。確かあそこに・・・」
クロロはそう呟くと、ハンガーにかけてあったコートのポケットを探った。
すると、の持つものとよく似た青い宝石が出てきた。
「ほら、コレだ。」
クロロはそう言って再び席につき、に宝石を見せた。
「ほんとだ。良く似てる。何それ」
「このまえ盗ってきたやつで別名『世界の雫』だ。そういえば、これには対になる宝石があると聞いていたが、それか?」
クロロはの手から赤い宝石を取って二つを見比べた。
二つを近づけたと同時に、淡い光が宝石から発せられた。
「ちょっと、何してんのよ。」
「俺は何もしてない。」
「クロロが持ってからこうなったんでしょ?」
そう言う間にどんどんその光は大きくなって、視界を真っ白にする。
周りは白く塗りつぶされているようで、全く何も見えない。
「あーもう。厄介事に私を引き込まないでよ。」
「だから、俺の知ったことじゃないって言ってるだろ?」
数分程その何もない真っ白な空間が続いた。
その間もの悪態は止まらない。
「あー、クロロなんて早々に追い出してれば良かった。」
「簡単に追い出される気は無かったがな。」
「あー何だか今すぐ目の前にいるデコを叩いてやりたい気分。」
「・・・・・・・・」
「いやいや、そんな目で見られても気色悪いだけだから。」
傷ついた目で見てくるクロロに、はそう言った。
そうこうしている間に光は収束し、だんだんと周りの景色が見えてきた。
室内ではない。明らかに外。しかも森の中だ。
「・・・・・・・クロロ?」
「・・・・・・・何だ」
「コレ、あんたのせいよね?そうよね??」
「一概に違うとは言いがたいな。」
しれっと言うクロロには米神がぴくりと動くのが自分でも分かった。
「さっさと元の場所に戻しなさいよね。」
がにっこりと笑って凄むと、珍しくクロロは顔を引きつらせる。
「まさか、戻れない、なんてほざくんじゃないわよねぇ?」
「・・・・・そのまさかだ」
クロロの手の中には、色を失い、真っ黒になって二つの宝石があった。
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