Guten Morgen!



ハーマイオニーの朝は早い。
5時に起きると外を散歩し、寒くなければ外のベンチで本をよみ、寒ければ部屋か談話室で本を読む。
まぁどっちにしろ本を読むのだが・・・。

今日は天気も良いし気温も寒くはなかったため、ハーマオニーは食事の時間まで本を外で読むことにした。





朝5時。
時を同じくしてドラコも目を覚ました。
時計を見て今5時であることを認めると、顔をしかめてまた毛布を被りなおした。






10分後。


がばっと身を起こしたドラコは再度時計を確認した。

「くそっ」

どうしてか寝ることのできないドラコはさっと着替えると、自分の部屋を後にした。

「何でこんなに早く・・・」

ぶつぶつと文句を言いながら外へと出ると、清清しい空気が頬をなでる。
することが無いドラコは暇を潰すために外を散策することにした。
澄んだ空気に眩しい光。窓のないスリザリン寮にいては中々体験できない風景。


朝の散歩がこんなに気持ちのいいものだとは知らなかったな。


そんな天気に機嫌を良くして歩いていると、前方のベンチに人がいることに気がつく。





その人物を確認して、同時に胸が高鳴るのを抑えられなかった。。









本を周りの森の音に耳を澄ませながら読んでいると、遠くから人の足が地を踏む音が聞こえてきた。
こんな時間に自分以外に誰が、と、興味半分で顔を上げると、見慣れたプラチナブロンド。


「マルフォイ・・・」


思わず口をついて出た名前にはっとする。


「何でこんな時間に?」


何か取り繕う言葉は、と、慌ててそう言ってマルフォイを見る。






マルフォイもまた無視されると思っていたために、声をかけられたことに驚きを隠せずにいた。


「こんな時間にも本か。相変わらずがり勉だな。」


習慣とは恐い。
そんな気はなくとも嫌味が口から出てくる。
今はハーマイオニーにいきなり話しかけられて動揺しているのもあるが。

慌てて発した言葉からは、いつものような嫌味ったらしい感じが感じられなかった。


「そうね、本ばかり読んでいるのも考え物かもね。」


微笑みながら本に目を落とす。


「・・・・・・散歩、するか」


「え?」


誰が誰と散歩する、ですって?


本から慌てて顔をあげて、そんな顔で見上げるハーマイオニーが何故だか、とても楽しくて、ベンチに座るハーマイオニーの腕をひっぱった。


「マルフォイ!?あなた、自分が何してるか分かってるの!?」



こうしてるマルフォイもマルフォイだけど・・・・
こんなことくらいで顔が熱くなっちゃう私もどうかしてるわ・・・



「聞いてるの!?」


ハーマイオニーの手を掴んだままずんずん進むドラコに怒鳴るように話しかける。


「はぁ・・・分かったわ。一緒に散歩するから、手を離して?」


それを聞いて、ふっと意地悪く笑うと手を離した。


「あなた、どうしたの?変よ?いつものマルフォイじゃないわ・・・」


ぱっと手を引っ込めて訝しがりながらマルフォイを見る。
その表情からは何を考えているのかが汲み取れない。


「そうか?・・・まぁ、そうだな。」


そうだ。僕は何をしてるんだ・・・。
くそ、こんな朝早く起きたのが悪い。大人しくベッドにいれば・・・・

隣のハーマイオニーに目を向ければ「本当に変ね」と、笑いかける姿。




いつもであれば自分には向けられることのない表情。
いつも自分以外の――特にポッターとウィズリーに向けられていた表情。







いつも、自分に向けられないだろうかと、思っていた表情。








「多分、こうして一度話してみたかったんだ。」


ぽつりと、呟くように吐き出された言葉にハーマイオニーは自分の耳を疑った。


あのマルフォイが何ですって!?
話してみたかった!?
この素直さといい・・・本当にドラコなのかしら・・・・


「まぁ、こんなことを言っても君は信じないだろうがね。」


しかし、つんと、そっぽを向いて言うドラコは、どうも偽者には思えない。


「そうね。あなたがこんなに友好的に接してくれるなんて、思ってもみなかったわ。」


いつも、いがみあってばかりだもの。
視線を下に落として呟く。


仕方がないさ。僕は純潔で君はマグル。


仕方ないわ。あなたはスリザリンで私はグリフィンドール。


「まぁ、仕方ないわね。」


本当は、そういう差別とか、派閥とかって大嫌いなのよ。
でも、そういう世界、学校にいるんだから、仕方ないわね。


「さてと。そろそろ戻らなきゃ。もう朝食の時間よ?」


「そうだな」


じゃあね。

ハーマイオニーはそう告げると、ドラコに背を向けて歩き出す。

あぁ・・・行ってしまう。

去っていく背中を見て何故か焦る。
このまま戻って普通どおりにしていれば、以前のいがみ合う仲に戻るだけだということは明白で。
どうしても、この時間を忘れてしまいたくなかった。
もっと、こういう時間を過ごしたかった。


「・・・・・・また、来ても良いか?」


迷いに迷って、ドラコはハーマイオニーの背中に問いかける。



ややぁ、間があって、「好きにすれば良いわ」と、ちらっとこちらを見てハーマイオニーは言った。


僕は、ガッツポーズを小さく取ると、一旦寮に戻る為、歩き始めた。



fin