どくんどくん、と凄い音をたてて心臓が鳴っている。
グレンジャーが関わるとコレだ。
でも今回はいつも並みなんてもんじゃない。
このまま心臓が破裂してしまうんじゃないかって思うくらいだ。
何て恋愛は体に悪いんだ。
僕は胸を押さえた。
【舞踏会2】
ああ・・・・とうとう舞踏会当日になってしまった・・・。
一緒に出る気があるのならば舞踏会の15分前の5時45分に図書館に来てくれ。と言ったものの。
ちらりと腕時計を見た。
5時32分。
柄にも無く緊張してしまう。
舞踏会の直前ということで図書室には誰も居ない。
一人タキシード姿で椅子に腰掛ける。
気を紛らわすように本を漁り読み始めるが全く内容は頭に入ってこない。
じっとしていられずに椅子から立ち上がってあっちへ行ったりこっちへ行ったり・・・・。
がらり。
と音を立てて扉が開いた。
「あ・・・」
僕は思わず呟いていた。
「早い、わね」
そう言った彼女は髪を纏め上げ、シンプルなドレスを着ていていつもよりも大人びて見える。
「来てくれたんだな・・・」
僕は思わず緩みそうになる顔を抑えながら、やっとのことで言った。
「まぁ、たまたま気が向いたのよ」
ふん、とそっぽを向きながら言う彼女はとても可愛らしくて、僕は彼女の傍に寄ると緩みきった顔で彼女を見下ろした。
「な、何よ・・・」
「いや、そろそろ此処を出ようかと思ってね。」
彼女の手を取り、エスコートする。
余裕を装いつつ。
「そうね、行きましょうか」
そうして僕たちは図書室を後にした。
がらり、と扉を開いて。
二人は図書室から足を踏み出す。
これから二人で舞踏会で踊れるという嬉しさ。
そして、二人の関係を公にするという恐怖を胸に秘めて。
どくんどくん、と未だに心臓が躍る。
自然と、体も強張る。
ハーマイオニーは自分たちを見るハリーとロン、そしてジニーの視線を想像して、少し怖くなった。
他の誰にどう思われようが構わない。
しかし、この3人に嫌われたくはない。
ドラコを見やると、彼は少し複雑な顔をしている。
ドラコは誰にどう思われようが構わないらしい。
彼の父・ルシウスを除いて。
そう、ドラコが一番というか、唯一恐れているのはルシウスにばれた場合のみ。
だが、今はそれよりもハーマイオニーと共に舞踏会へと行ける喜びの方が勝っている。
「不安なのか?」
にやにやしながら聞いてきたドラコにハーマイオニーは頭をぶんぶん振って否定した。
「そんなことないわよ」
そして気丈に振舞ってみるが、やはり不安は拭い去れない。
「不安にならないおまじない。してやろうか。」
ふと、発せられた言葉。
どんなおまじないよ。
と、首を傾げながらドラコを見上げると
唇に暖かいものが触れた。
「〜〜〜〜〜!!!!なっ何するのよ!!」
ハーマイオニーは顔を真っ赤にしてドラコを引っ叩こうとするが、其の手はドラコによって阻まれる。
「・・・っはは、その方がグレンジャーらしい。」
ドラコは笑いながらそう言う。
そしてその瞳はとっても優しげで。
はぁ〜・・・・
ハーマイオニーは溜息をついて、どうにでもなれ と、舞踏会会場へずんずん進んでいった。
さぁ、舞踏会まであと数メートル。
嬉しさと恐怖を抱えて
扉を共に、開いてみようか。
続?
ここで終わっちゃ駄目かな・・・。