「・・・・・っ、グレンジャー!」


去ろうとする彼女の背中に


勇気を振り絞って


僕は声を掛けた。























【舞踏会2】



















「おはよう、マルフォイ」


マフラーをぐるぐる巻きにして、彼女はベンチに座って本を読んでいた。


息が白い。


「ああ。・・・・今日は冷えるな。」


僕ははやる気持ちを抑えて応える。


「本当に。でも、空気が澄んでて気持ちが良いわ。」


本を持つ手が寒そうだ。
手袋でも持ってくるんだった。
















「さて、と。」


暫くぼんやりとベンチに座っていたグレンジャーは、そう言って立ち上がった。


「今日は朝、ちょっと用事があるのよね。」


やばい。

まだ、何も言っていないのに。


「また、ね。マルフォイ。」


ああ、行ってしまう。


「あぁ・・・またな・・・・。」


言わなければ。

引き止めなければ・・・!



焦りが僕の心を満たしていく。


そして




「・・・・・・っ、グレンジャー!」


思い切って言ったら、背を向けていた彼女が振り向く。


「舞踏会に、出る相手がいないんだろ?」


それを嫌味と取ったのか、グレンジャーは少し顔を歪めた。


「あなたに関係ないでしょ?」


「僕が一緒に行ってやるよ。」


ああ、何で僕はこんな言い方しか出来ないんだ。

一緒に行ってくれ。と。

言うだけで良いのに・・・・


「・・・・からかわないでよ。あなたはパーキンソンと行けば良いじゃない。」


何でそうなるんだ。

僕は次第にイライラしてきて


「一緒に行ってくれ。と言っているんだ!」


と、声を荒げて言ってしまった。


「・・・・ソレが人に物を頼む態度なの?」


「一緒に行ってくれって頼んでるじゃないか」


「・・・・・・・」


グレンジャーは考えるように瞳を閉じた。


「・・・・行くんだ。もう決めたからな!」


なんて、僕は勝手なことを言っているのは分かっている。

けど、この時は余裕が無くて口任せに言ってしまった。


「ちょっとマルフォイ!」


咎めるような声をあげるが、僕は構わずに背を向けて歩き始める。


後ろで諦めたような溜息が聞こえてくる。



「気が向いたら、行くわ!」


やっと肯定的な台詞。

僕は不敵に笑んで


「きっと気が向くさ」


と自信たっぷりな風に言ってやった。

内心びくつきながらね。


























あとは舞踏会当日を待つのみです。